2024年ジャワ島(アフリカンプリント布の源流)への旅【前編】


左が西アフリカのパーニュ、右がジャワ更紗

 今年も梅田洋品店は10月にお休みをいただきました。

いつもはアフリカ大陸へ買いつけ旅をするための恒例のお休みですが、今回はある目的があってインドネシア(のジャワ島の3都市)を訪ねることにしました。

なぜジャワ島へ?

梅田洋品店が服作りに使っているのは「アフリカン・プリント」です。

細かく言うと、東アフリカの「カンガ」や南アフリカの「シュエシュエ」も使いますが、西アフリカの「パーニュ」がメインです。

左からコートジボワールのパーニュ屋さん、ケニアのカンガ屋さん、南アフリカのシュエシュエ屋さんにて。サイズやデザインの特徴がそれぞれの布で異なります。

「パーニュ(仏語で『腰布』)」は英語圏では「ワックスプリント」とも呼ばれます。つまり「ろうけつ染め」を模した機械プリントのことです。

 

アフリカ布」という呼び方も最近は耳にしますが、多くの人がそれでイメージするのも、伝統的な布(泥染め布、ラフィア布等)ではなく、この西アフリカで多く売られているパーニュ=ろうけつ染めを模した機械プリントの布ですよね。

 

そう、「ろうけつ染めを模した」…

ろうけつ染めといえば、ジャワ語で「バティック」…!

じつは、「パーニュ」の源流はインドネシアのジャワ島にあるのです!

歴史をざっくりと…

ちょうど梅田洋品店を始めた2006年に国立民族学博物館で更紗の特別展が開催され、大阪まで行ったことを覚えてます。

 私の理解では、「西アフリカの機械プリントの布の歴史」はざっくり以下のようです。

★15~17世紀の大航海時代に、インドのプリント布(インド更紗)が世界中に伝わる。日本にも。
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ジャワ島でもインド更紗を参考にしたと思われる「ろうけつ染めバティック)」が独自に発展。ただし王族用として。
伝統的なバティックの特徴は、ロウを布の両面に置いて表裏まったく同じに染めること。柄のモチーフは波や剣、椰子の実、星、花など。「忍耐力」「愛と幸福」などの意味が込められていた
ジャワ人の多くが信仰しているイスラームの教えにより、人物や動物のモチーフはなかった(インドや中国の影響による神鳥や蛇神、孔雀の羽の柄などはあり)。 
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★18世紀後半の産業革命期にイギリスローラーを使う機械プリントが発明される。
18世紀末にイギリスは機械織りの布を大量生産して、植民地インドに輸出。そのためインドの手織り布産業は衰退。
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オランダは17世紀からインドネシアを支配。
19世紀、オランダはローラーによるろうけつ染めを開発。「模倣バティック」を大量生産。ジャワ島に輸出…したのですが…
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★インドの例とは異なり、ジャワ人は負けずに生産性を向上。
手描きだけでなく、ブロックプリント(銅のスタンプ=チャップ)も使い、バティックの量産を可能にした。欧州からの大量の綿布の流入もあった。
価格も求めやすくなり、大衆化(ただし、「王族以外は着用厳禁の柄」はあった)。
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★それに、オランダの模倣バティックは「ロウのひび割れ」が残っていた(現在でもそう。いかにも「ろうけつ染め」に見せるため、あえてそのように製造?)。
ジャワ人の好みには合わなかった
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ところが、同じくオランダ領だったゴールドコースト(現在のガーナ)に模倣バティックを輸出すると、デザインも質もたいへん好まれた(それ以前に、兵士としてジャワ島に派遣されていたアフリカ人たちが模倣バティックを持ち帰っており、そのときから人気だった――という説も)。
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アフリカ人の好みに合わせて、線を太く、色を明るくデザイン。モチーフには傘や扇風機等の道具のほか、人物含む生き物の絵も。
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以来、イギリスや中国の企業も製造と輸出を始めたり、現地にも工場ができたりして、「パーニュ(ワックス・プリント)」は西アフリカ各国の市場にあふれ、「アフリカ布」を代表するまでになった――。

まとめると以上のようです。主な参考資料は以下です。

グロフィレーさんによれば、パーニュ(ワックスプリント)は「適応と模倣から生まれた不思議な布」。

実際、バティックの柄の名残もあります。

西アフリカの機械プリント布の源流はジャワ島にある」という意味がおわかりいただけたでしょうか。

もっとも、今回ジャワでお会いしたバティック博物館のガイドさんも、バティック工房のスタッフさんも、西アフリカのパーニュとその歴史についてはご存知ないようでした。

「うちが元祖だよ」と、もっと自慢していいかもしれませんね。

続きは後編で…

ともかくそういうわけで、この18年間はアフリカにばかり行ってましたが、「ジャワ島にもいつか!」とずっと思っていたのです。

ようやく、今回ジャワの3都市をまわることができました。

バティックを学ぶため、そして服に仕立てるバティックを求めて…

でも、前置きが長くなってしまったので

続きは別の記事にします…!


【おまけ】

機械プリントでは、このような銅のローラーを使います(ガーナの工場にて)。

ローラーに加え、バティックのようにブロックプリントを施すことも(ガーナの工場にて)。

ジャワ島でのブロックプリント用の銅型(チャップ)。

おまけのおまけ。こちらはガーナのハンドプリント工房での一コマ。固いスポンジのブロックプリント。

 

梅田洋品店は東京・茗荷谷のアトリエにて《アフリカワイイ》一点ものの洋服作りをしています。詳しくは梅田洋品店についてをご覧ください。

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